皮革のススメ。

皮革のススメ。

皮革って?

牛、馬、羊、鹿、さらにはワニ、ダチョウ、カンガルーなど実にさまざまな種類が存在する革製品。それぞれが、独自の風合いや特性を持っています。しかし、その良さを最大限に引き出すのは職人の仕事。上質な素材を一流の技術で仕立ててこそ、最高の革製品が生み出されるのです。革製品の材料となるのが皮革(ひかく)です。皮革って聞くとピンとこない人もいるのではないでしょうか?そもそも皮革とは、動物の皮膚を生のまま、もしくは、なめしてあるもののことです。20世紀以降では人工的に作られた人造皮革(人工皮革と合成皮革、商標名「クラリーノ」「エクセーヌ」など)があり、それらを含む場合もありますが、その場合動物の皮膚をなめしたものを人工皮革と区別するため、天然皮革ということもあります。ヨーロッパなどでは基準があり明確に区別されていますが、日本では基準が浸透していないため、曖昧になっている傾向があるんです。

皮と革の違いって?

「皮」と「革」の違いは分かりますか?実は動物の皮膚をそのまま剥ぎ、製品として使用したものを皮といい、動物の皮膚の毛を除去しなめしてあるものを革というのが一般的です。ですが、「革」を「皮」と表示する場合もあります。これは「革」の文字が教育漢字となっていなかったことに由来するんです。複雑ですよね(^ー^;)そうそう、皮革の中でも、元々生えていた体毛まで利用するものは毛皮と呼びます。「毛皮」と「体毛」だと印象が随分違いますよね☆

なめしって?

「なめし」って聞いたことはありますか?動物の皮は、一般にそのままだと固くなったり腐敗してしまったりします。これらを防ぎ、皮を柔らかくして耐久性や可塑性を加え、皮革として利用するために必要な作業がなめしです。なめし加工を施すことにより、単に動物の皮膚だった「皮」から、製品に使われる「革」へと変化するのです。

なめしの工程

せっかくなので、なめしの工程についてもお話します。なめしの工程では、腐敗しやすい動物の脂を除き、たんぱく質 (主にコラーゲン繊維) を変性させます。また、柔らかくするために主に合成の脂(リンスと同じ)を再度入れます(加脂)。

なめしの歴史

なめしの歴史はなんと原始時代にまでさかのぼります。原始時代の人類はすでに自らの唾液で皮をなめしていたそうです!古代になり、植物に含まれるタンニンを利用してなめす方法が開発され(タンニンなめし)長らく使用されてきましたが、現在では化学薬品で処理されることが多いようです。主にはクロムなめし剤(塩基性硫酸クロム)が使用されるのですが、その作用機序は皮のタンパク質とクロムの錯体を作って、耐熱性等の性能が向上し、革となります。さらに、タンニンなめし剤とクロムなめし剤などの金属化合物を組み合わせたコンビネーションなめしという方法も用いられてきています。今までは比較的安価なクロムなめしが主流だったんですが、昨今の環境問題からタンニンなめしが見直されています。

なめしの種類

なめしにも色々な種類があるんです。

クロムなめし(通称;Wet-Blue ウェットブルー)
切り口が青白色、伸縮性が良い、柔軟でソフト感がある、吸水性が低く水をはじきやすい、耐久力がある、比較的熱に強い、などが特徴です。衣料用にはクロムなめしが用いられる事がほとんどです。タンニンなめしに比べて工程の省力化からコストを抑えられる反面、なめし工程上で使うクロムが焼却により化学反応(酸化)を起こし、人体に有害な6価クロムに変化するので処分の際は注意が必要です。
タンニンなめし
切り口(コバ)が茶褐色、型崩れしにくく丈夫、染色しやすい(染料の吸収がよい)、吸湿性に富む、使い込むほど艶や馴染みがでる、などの利点があります。反面、タンニンでなめす場合、タンニンを革の中心部分に浸透させるために、タンニン濃度を徐々に上げる必要があります。濃度が高いと表面にだけタンニンが結合し、後で浸透しなくなってしまいます。なので工程数が多くなり、30以上の工程を踏まえる必要があり高コストになります。よく皮革製品で「飴色になる」と表現されますが、それはこのタンニンなめしによるものです。手縫いを用いるような鞄等にはタンニンなめしの材料が使われます。
コンビネーションなめし
タンニンなめしとクロムなめしを組み合わせたもの。
アルデヒドなめし(通称;Wet-White ウェットホワイト)
環境問題からタンニンなめしの革と同様にクロム (メタル) フリーの革として普及してきています。クロムなめしに比べてややコストが高めになります。
脳漿なめし
古来伝わる古いなめし法。技術が失われつつありましたが、少数の有志により復興中。

皮革の加工

さて、皮革の加工についてもお話します。製革の作業には、表皮を銀(吟)と称し、薄手の革を作るために銀面がついた層(銀付き革)と内部の繊維層(床(とこ)革)に割る(スプリット)、なめし前の工程を施す場合があります。そして大きく分けて準備工程、鞣し工程、再鞣・染色・加脂工程、仕上げ工程があります。

  • はっ水、防水加工;フッ素やシリコン、防水用加脂剤等を使用して機能を高めたもの。
  • エナメル:革にエナメルペイントを施すことで光沢と耐水性を持たせたもの。ドレスシューズ(社交の場などで着用される装飾性・デザイン性の高い靴)などに多用されます。最近はフィルムを貼ることも多くあります。
  • 型押し:牛革などにプレスで模様をつけたもの。模様は、ワニ革を真似た模様や格子模様、篭目(バスケットウェーブ)など様々あります。
  • スエード:革の裏側(肉面)をやすり等で起毛させたもの。柔らかく、ビロード状に仕上がる。床革を使用する場合もあります。
  • ヌバック:革の表側(銀面)をやすり等で起毛させたもの。デザイン目的でドレスシューズにも用いるほか、傷を目立たせないという目的で登山靴にも用いられます。
  • オイル、ワックス仕上げ:本来は防水効果のためでしたが、プルアップや焦がしなどのファッション効果を求めて施されることが多いです。
  • 色づけ:色むらを出すために、色づけする場合もあります。靴を成型した後に、脱色した革に色づけする場合もあります。
  • 製品染め:靴やカバンを縫製した後、染色したもの。こなれ感と微妙な色ムラで使いこなされた風合いが出ます。
  • カゼイン仕上げ;カゼインを主体にして、グレージングやポリッシングで艶を出したもの。
  • クラッキング:皮革にあえてひび割れを施したもの。カジュアルに多いダメージ加工。

皮革と塗料

一般の皮革製品は、ほとんど何らかの皮革用塗料(ワックスも含め)が塗装してあり、なめしの時に染色したり、塗装の時にスプレー染色するなど、染料や顔料で着色してあります。

皮革の使用場所

皮革はフライトジャケットなど飛行服や潜水艦乗組員の作業服など、革靴、鞄、ベルト、サスペンダーなどによく使われます。他に椅子の表張りやライダ-スーツなど、耐摩擦性、引っ張り強度などの耐久性が求められるものにも皮革は多く使われています。馬具や球技用の球、野球のグラブ、自転車のサドルなどのスポーツ用品にも多く用いられていて、皮革は私たちの生活に欠かせない存在といえるかもしれませんね☆

皮革とパッキン

皮革と水洗式トイレのパッキンはとっても重要な関係があるんですよ。革パッキンであれば、摩擦抵抗が小さい為、ピストン運動に強く、万一傷が出来て漏れ出してきてもある程度繊維が傷を埋めていく働きをするので、ゴムパッキンのように即座に交換しなければ全く使いものにならないということは無い為、水洗式トイレのパッキンとしては、革製のパッキンである事がとりわけ重要なんです。水洗便器用洗浄弁であるフラッシュバルブの心臓部の部品であるピストンバルブ部ワン皮パッキンに皮革が用いられ、水を流す度に高圧で往復運動するピストンバルブが故障すると水が出なくなったり、あるいは水が止まらなくなり悪影響を及ぼしてしまいます。

皮革と車

皮革は手触りが良いため、高級車に限らず、一般的な価格帯の自動車でも、ステアリングやシフトノブには皮革巻きの物が用いられる場合があります。もちろん高級車や高価なスポーツカーでは、シートやダッシュボードなどの内装材が総皮革製の車も多く、人造皮革であるエクセーヌ(アルカンターラ)が普及した現在においても皮革の人気が伺われます。オートバイのシートにも用いられることがあります。

皮革と防具

かつて皮革は鎧や兜、楯など防具にも多く使用されていました。剣や刀の柄にも滑り止めの為に皮革製の紐が巻きつけられ、現代でも野球のバットをはじめとするスポーツ用品の柄や、オートバイのハンドルバーグリップにも皮革が滑り止めとして用いられる事がありました。小銃や散弾銃の負い紐(スリング)や銃床の頬当て(チークピース)、拳銃のホルスター等の軍需品にも皮革は広く使われていました。合成ゴムが普及する以前は、気密性が要求される手動ポンプ(ポータブルストーブやランタンのエアポンプなど)や、空気銃等のピストンのパッキン(ポンプカップ)、水道用パッキンといった工業製品にも皮革が用いられていたんですよ。

皮革と楽器等

皮革は太鼓や三味線、三線などの楽器にも利用されています。他にもサメの皮のワサビおろし器(サメの表皮の特性を利用)、ビリヤードのキュー先端に取り付けるティップ(革が持つ弾力性と緩衝性を利用)など、私たちの周りには皮革の特性をうまく利用した製品がとても多いんです☆


皮革のススメ。